「臨床試験に関する罰則付きの新規制」と薬の評価の変化〜コレステロールって下げたほうがいいの?No.8

⒏欧米が2004年に「臨床試験に関する罰則付きの新規制」を開始したら・・・

欧州連合(EU)が「臨床試験に関する罰則付きの新規制」を発効した 2004 年の前後で、コレステロール低下剤が心血管イベント1)抑制に効果があるのかどうかについての評価が激変しました。

1990年代には、「コレステロール低下剤は LDL コレステロール値を下げ、かつ心血管イベントを 3 割ほど 抑えた」という論文が、著名な医学誌に多く掲載されていました。それらの結果から、「コレステロー ル値は低ければ低いほどよい」という理解が生まれました。

ところが、欧米で薬に関する医学論文の不祥事があいついで明るみにでたため、臨床試験施行のための新規制(罰則付き)が 2004 年に EU で発効し、その後、企業と何も利害関係のない研究者により新法にそって行われたコレスレロール低下剤についての信頼性の高いRCT試験2)全て、「コレステロール低下剤は心血管イベント抑制効果を示さなかった」と報告されたのです。

そして、従来コレステロール低下剤が必須と思われていた糖尿病、脳卒中、心不全、家族性高コレステロール血症(FH)、大動脈狭窄症、血液透析、心筋梗塞などの患者に対しても明確な効果が認められませんでした

家族性高コレステロール血症(FH)の男性では LDLコレステロールが高く、50 歳までに約半数が心筋梗塞を起こすことが知られており、コレステロール低下治療が絶対的と考えられていましたが、コレステロールを下げても動脈硬化の進展は変わらなかったのです。

このことから、心筋梗塞の本当の原因はコレステロールではないことが明らかとなりました。現在、真犯人捜しが行われています。

このような状況に陥ったため、米国のコレステロールガイドラインは 2003 年の改訂以来ストップした状態が続いていましたが、2013年に9年ぶりに新しいガイドラインが公表されました。それは、「コレステロールが低ければ低いほどよいとする説を放棄」し「基準値を決めそれ以下に保つ策を放棄」したものでした。大きな方向転換です!

結局「動脈硬化性疾患の人、糖尿病者など一部の人をのぞいて、LDL-C 値が 70~190 という広い範囲にわたって、 コレステロール低下医療の対象者としない」としたのです。

【医療用語の解説】

1)心血管イベントとは、「心血管死」「心筋梗塞」「虚血性脳卒中」のこと。
2)RCT試験(Randomized Controlled Trial、ランダム化比較試験)
治験及び臨床試験等において、データの偏り(バイアス)を軽減するため、被験者を無作為(ランダム)に処置群(治験薬群)と比較対照群(治療薬群、プラセボ群など)に割り付けて実施し、評価を行う試験。(http://www.chikennavi.net/word/rct.htm)
一番信頼性の高い臨床試験と言える。

これだけのことが分かってきていても、なぜコレステロール低下剤(スタチン剤)はこんなに出され続けているのでしょうか・・・。

つづく

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この記事を書いた人

なおこ

なおこ

京都市内在住の薬剤師です。
仕事の中での気づき、想うこと、服薬ケア研究会での深い学び、糖質制限食などの食に関する学びや私なりの知見を発信しています。
好奇心旺盛、学ぶことが大好きなので、その他にもいろんなテーマで誰かのお役に立てそうな情報も発信中。