「うつ」と鉄欠乏と高血糖1〜奥平智之先生〜

「女性と子供の食事栄養」 江部康二先生&三島学先生&奥平智之先生
という勉強会に参加してきました。

3人の先生方に共通していることは「糖質制限」の効果を理解、実践し、仕事に生かされていること。
糖質制限食のすごさに、驚くばかりです
一般の方向けの勉強会でしたが、きちんと、エビデンスを示しながらのお話に納得しました。
まず、最初の奥平智之先生のお話では、「うつ病と鉄欠乏、糖質制限の関係」ちょうど私が聞きたいと思っていたテーマでドンピシャ!

広告

「うつ」と鉄欠乏

今日は、その奥平先生のお話をご紹介します。

精神科医であり、漢方医でもある方で、栄養療法(食養生)、漢方治療、予防医学(未病)、再発予防を重視されてる先生です。

まず、「うつ病」は、何らかの原因で、脳内の神経伝達物質であるセロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンなどの不足から起こることがわかってきていて、最近のSSRI、SNRIなどの優れた薬剤で、7割は症状が改善されている。

しかし、これらの神経伝達物質は、アミノ酸(たんぱく質)、ビタミン(ビタミンB6、ナイアシン、葉酸など)、鉄などで作られており、そもそもの原因が栄養不足でこれらの神経伝達物質が足りないのであれば、それを補うことが根本治療であり、重要。

特に若い女性にうつ病などの精神症状がある場合には、隠れ鉄欠乏性貧血が一因のことが多いにある。今日は特にこの鉄欠乏を中心に話が進みました。

↓写真1

img_7978

↓写真2

img_7982

例えば、写真1の患者さん。その血液検査の結果が、写真2です。
一見、血液検査結果は、ほぼ基準値におさまっていて、問題なさそうに見える。

しかし、奥平先生によると実はこの表を見ただけで、問題があるとすぐわかると。さて、なんでしょうか?

貧血に関する数値は、4つ。
○ヘモグロビン(Hb)
○鉄(Fe)
○MCV(赤血球の大きさ)
○フェリチン(貯蔵鉄)

全部、基準値内におさまってます。何が悪いのでしょうか?

まずフェリチンが、一桁であることが、赤信号!!
女性の場合、「フェリチン25以下は赤信号、50以下は黄色信号。50以上を目指せ!!」だそうです。
フェリチンとは、お金でいうと、通帳の貯金。いくらお財布にお金(鉄 Fe)があっても、フェリチンが低いと
通帳のお金は底をついていて、体は困っている状態。

ただフェリチンが鉄欠乏の指標になるかというと、フェリチンが高い時もふたつの場合があって、本当に貯蔵鉄が十分ある場合と、体に炎症がある場合。

そんな時に参考になるのは、MCV(赤血球の大きさ)。MCVは、炎症に左右されない。90以下は少ない。

鉄Fe(血清鉄=血液中の鉄)は、100くらいが普通で、Fe値が低い時は、ふたつの場合があって、本当に鉄Feが少なく足りない場合と、体に炎症がある場合。(体に炎症があると血液中にFeを流さないように体は調整する)

よってこの女性の場合。鉄不足が十分考えられます。

鉄はヘモグロビンに使われて、細胞に酸素を配達する役目があり、鉄が不足すると、身体中が、十分な酸素が配られず。エネルギー不足になる。

鉄は、それだけでなく細胞を作るために不可欠な物質でもあり、不足すると細胞の生まれ変わりが正常に行われないので、肌が荒れるだけでなく、免疫細胞の数が減少したり、脳内のセロトニンやドーパミンのような神経伝達物質が不足したりといった深刻な影響が全身に表れます。

よって、様々な体調不良。肌荒れ。うつなど
幅広い症状を引き起こす。

フェリチン=9の場合は、鉄を補充すれば3〜6ヶ月で、回復することが予想でき、実際この例の女性も、半年後にはすっかりうつ症状が改善し職場復帰ができた。
逆にフェリチン=90の場合は、体に慢性的な炎症があることが考えられ、その炎症が何であるかを探って改善していくのは長期戦が予想される。また、炎症があると、腸管で鉄が吸収されにくくなるので、その工夫も大切。

結局、この女性の場合、「うつ」であったというより、栄養障害であったと言える。

若い女性の場合は、月経のたびに鉄が失われるので、男性よりも多くの鉄分を摂る必要があります。が実際は、なかなか摂取できていない人が多いのが現状のようです。

日本女性の20〜49歳の70%がフェリチン30未満だそうです(平成20年国民健康・栄養調査報告より)

img_7983

検査値の基準値とは?

ところで、基準値内なのに、大丈夫ではないとはどういうことなのでしょうか?
この基準値は、検査機関や医療機関によって、結構違っているようです。
各社それぞれで、調査するので、調査には費用もかかるので、少人数でデータを取ることもあるとのこと。

例えば、写真2の検査会社のフェリチンの基準値は、5〜149。
この会社の調査対象の人たちには若い女性が多かったのだろうとおっしゃってました。社員のデータでしょうかと。
若い女性は、生理があるので貧血気味の人が多い可能性が高いです。
それにしても、奥平医師の50以上が正常値というのは、新しい判断基準かもしれません。
他の会社の基準値も女性10〜85とか、20〜70などが多いです。

基準値ってそんなものなんですね。

また、調査対象の5〜95%の数値を基準値にするので、必ず5%以下の人、95%以上の人は必ず基準値からはみ出ます。
ちょっとはみ出てる人は、ほとんど気にしなくて大丈夫ということですね。
大きく外れた場合も、その数値だけでわかるものと、今回のようにいくつかの数値を組み合わせて、総合判断しないとわからないこととあります。
検査結果にあまり一喜一憂して心配しすぎは禁物です。

明日は続きです。
この女性の『甘いものが好きで、間食が多い。肉は食べない』に注目。糖質制限のお話に移ります!

この記事を書いた人

なおこ

京都市内在住の薬剤師です。
仕事の中での気づき、想うこと、服薬ケア研究会での深い学び、糖質制限食などの食に関する学びや私なりの知見を発信しています。
好奇心旺盛、学ぶことが大好きなので、その他にもいろんなテーマで誰かのお役に立てそうな情報も発信中。