ブックレビュー「江部康二の糖質制限革命」13〜Q&Aまとめ〜

前回はこちら

「第5章正しい知識で糖質制限食への誤解を解く」

Q&Aを2回に分けてまとめます。詳しくは本を読んでみてください。

Q1:「脳はブドウ糖しか使えない」と聞きましたが、糖質制限食は大丈夫なのでしょうか?

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A:完全に誤解です。脳はブドウ糖の他にケトン体も使えます。
なので、「あまり糖質を制限しすぎると、頭がぼーっとしますよ。脳はブドウ糖しか使えませんからね。」「最低限の糖質は食事で取らないと脳のエネルギーがなくなりますから糖質制限はほどほどにしましょう」のような指導は間違っています。

私自身も実際に長いこと朝に糖質を摂らない生活を送っていますが、ぼーっとしてしまうことは全くありません。むしろ、頭がスッキリ冴えて、体も軽く元気はつらつです^^

Q2:「タンパク質や脂質でも血糖値は上がるから、糖質だけ減らしてもあまり意味がない」と栄養士から聞きましたが?

A:血糖値を直接上げるのはブドウ糖だけ。タンパク質や脂質を食べても直接、血糖値は上がらない」これは科学的に証明されている事実です。
かつて栄養士が学校で教わった栄養学では「タンパク質や脂質も血糖値を少し上げる」となっていましたが、その後研究が進み、食事のタンパク質や脂質は直接血糖値を上げないことが確認されています。

追記(2019/2/20):
ただし、糖尿病の人は、タンパク質でも少し血糖値が上がる人がいるようです。
その仕組みは・・・

⚪︎1型糖尿病の人は、インスリンが分泌できない人。なので、タンパク質摂取でグルカゴンだけが分泌され、
インスリンは分泌できないので、グルカゴンによる糖新生で、間接的にかなり血糖値が上昇する。

⚪︎2型糖尿病でも、インスリン分泌がしっかりできなくなっている場合は、
タンパク質摂取で『グルカゴン分泌量 > インスリン分泌量』 となり、
血糖値が上昇することがある

⚪︎あと、体質的に、相対的にインスリン分泌量よりグルカゴン分泌量が多いタイプの人は
2型糖尿病でインスリン分泌能がちゃんと残っていても、たんぱく質摂取で血糖値が上昇する。

⚪︎なお正常人では、タンパク質摂取で
インスリンとグルカゴンが同程度分泌されて、効果が相殺されるので
血糖値上昇がないと思われる。

以上、詳しくはドクター江部の糖尿病徒然日記「蛋白質と血糖値」参照のこと。

ちなみに「グルカゴン」とは血糖値を上昇させるホルモンで、肝臓のグリコーゲンを分解して血糖量を増加させます。

追記終わり。

Q3:糖質制限食でひどく痩せてしまいました。どうすればいいでしょう。

A:食事のカロリーが低すぎるのかもしれません。
糖質制限食には血糖をコントロールする効果と体重減少効果がありますが、通常摂取カロリーが十分あれば、過度に痩せすぎることはありません。その個人における適正な体重で落ち着きます。
もしも、少食タイプの方で、どうしても十分なカロリーがとれず、痩せすぎる場合は、間食でカロリー補給をおこなってください。具体的には、糖質の少ないナッツ類やチーズを間食でとります。ナッツ20〜30粒を1日2回くらい大丈夫です。あるいは、果物。アボカドは糖質は100gあたり0.9g と非常に低くて高カロリーなので好都合です。そのほか、いちご7粒、モモ(中サイズ)3分の2個など。または、オリーブオイルを積極的に摂ることもオススメです。

Q4:糖質制限食を実行しているのにやせません。どうすればいいでしょうか。

A:カロリーを控えめにすれば大丈夫です。
糖質制限食には肥満解消効果があります。しかしまれに肥満がある糖尿病の人が糖質制限をしてもやせないケースがあります。このようなケースは全体の1割未満で見られ、女性に多く基礎代謝が低いタイプのようです。対策としては摂取カロリーを少し減らしてみます。
糖質制限食は基本的には摂取カロリーの制限は必要ありませんが、体重減少が必要な人でやせない場合は、「糖質制限食+カロリー制限」が必要になります。

Q5:糖質制限をしてからイライラするようになりました

A:特にスーパー糖質制限食を開始した場合、まれに、イライラしたり、精神的に不安定になったりする人がいます。そのほとんどは、炭水化物依存症が疑われます。
炭水化物依存症は日本では聞き慣れない言葉ですが、アメリカでは認識の定着した疾病です。
食事と頻繁な間食などにより、起きている時間の多くで外部から糖質が入り、血糖値が上昇することで一種の幸福感が得られ、依存が生じます。

3度の食事で糖質を普通に摂っていても間食をしなければ、1日に12時間程度は空腹状態になり、糖新生(注1)を行います。しかし、日常的に糖質を頻繁に3度の食事の他に糖質の多い菓子類や飲料を夜中も含めてなんども間食をしていると、常に血糖が高めなので糖新生を行う時間がほとんどなくなり、肝臓の糖新生の機能が低下します。そのため、スーパー糖質制限食で、糖質のかなり少ない生活を始めると、血糖値が低めになり、精神的に不安定になりやすくなります。
対策としては、1〜2ヶ月かけてプチ糖質制限から始めて、徐々に制限をしていけば糖新生の機能が回復することが多いようです。炭水化物依存症は、タバコのニコチン依存症と似た面があり、脱却するには本人のかなりの自覚と意思が必要なようです。

(注1)糖新生(とうしんせい)とは、血中のブドウ糖量が低下したときに、肝臓でアミノ酸や乳糖などの糖質以外のものからブドウ糖を作り出す仕組みの事です。

Q6:糖質制限食をするには、ビタミンやミネラルのサプリメントが必要なのでしょうか。

A:高尾病院式の糖質制限食にはサプリメントはいりません。
高尾病院式の糖質制限食は、野菜、海藻、キノコなどをたっぷりとりますのでサプリメントを摂る必要はありません。
野菜にも糖質はある程度含まれますが、かなりたっぷり食べても通常1回の食事で20g以下に収まります。(ただ根菜は糖質多めなので根菜ばかり摂りすぎることがないように)
ただし、非常によく運動する人で、こむら返りなどの筋肉痙攣を起こしやすい人はカルシウムやマグネシウムなどのサプリメントで予防するのは問題ないでしょう。

第5章次回もつづく

江部康二の糖質制限革命―医療、健康、食、そして社会のパラダイムシフト
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この記事を書いた人

なおこ

京都市内在住の薬剤師です。
仕事の中での気づき、想うこと、服薬ケア研究会での深い学び、糖質制限食などの食に関する学びや私なりの知見を発信しています。
好奇心旺盛、学ぶことが大好きなので、その他にもいろんなテーマで誰かのお役に立てそうな情報も発信中。