前回、日本での死亡原因の第1位であるがんについて、糖質制限食による予防効果をまとめました。
今回は、死亡原因第2位の心疾患の糖質制限食による予防効果についてと3位の肺炎の予防効果についてまとめます。
死因第2位の心疾患の予防効果について。
少し簡略化して説明しますが、
心疾患で死亡するケースはほとんどの場合、心筋梗塞が多いです。その心筋梗塞は、動脈硬化によって起こります。
そして、その動脈硬化の原因としては、糖尿病、高血圧、肥満、たばこ、脂質異常症などですが、これらのうち、たばこ以外は、糖質制限をすることで、すべて改善されるので十分予防できることが予想できます。
例えば、糖尿病が動脈硬化のリスクになる理由の1つは、高血糖です。血糖値が高いと血管が傷つきやすくなり、血管が傷つくとコレステロールがくっつき、動脈硬化が進みます。糖質制限食を実践すれば、たとえ糖尿病でも血糖値を正常に保つことができるので動脈硬化のリスクを回避できます。
この心疾患の予防効果については、研究結果を待っている段階なのでまだエビデンス(科学的証拠)は得られていません。確かな研究結果が出るためには、数千人〜数万人を対照とした研究で、数年〜数十年の年月が必要なことが多いのです。
ただ、著者は、現場の医師として、糖質制限を実践した患者では、予防効果をたしかに実感しています。例えば、プラーク(血管内の壁にできるこぶのようなもので、血管が詰まるもとになる)が縮小したり消えて行くケースを3例体験しており、心臓のステント(血管が細くなって詰まりそうな部分を広げるために入れます)は1本入れるとほとんどのケースで、そのあともう1本、あともう1本とステントをどんどん増やす事になることが多い中、糖質制限食を実践する患者では、1本入れたあと全く増えないそうです。
死因第3位の肺炎の予防効果について
肺炎などの感染症の予防には、動物性タンパク質が有効である事が分かってきています。動物性タンパク質を摂ることで、血液中に血清アルブミンが増えます。血清アルブミンは血液中の濃度4.3g/dlを境に感染症へのかかりやすさと生存率に違いが出るそうです。もちろん4.3g以上ある方が感染症にかかりにくくなり、生存率が高いのです。
血清アルブミンとは、血清に最も多量に含まれる単純タンパク質で、通常血清100ml中に4〜5g含まれて、食事タンパク質の摂取量を敏感に反映するので,タンパク質の栄養状態判定の指標になります。
ちなみに、植物性タンパク質では、血清アルブミンをあげる効果はあまり高くないとのことです。
肺炎で亡くなるケースは特に高齢者に多いです。
私が病院に勤務していた時の実感として、確かに高齢者は血清アルブミン値が低い人が多かったです。食が細くなってくるからか、肉類より野菜をメインに食べるようになるからか分かりませんが。高齢になってもタンパク質(お肉やお魚の特に動物性タンパク質)をしっかり食べないといけませんね。血清アルブミンは、感染症予防だけでなく、骨粗鬆症や認知症の予防になることも分かっているそうです。
糖質制限食を実践すると、糖質を減らす分、お肉や油分が増えることになるので自然と高タンパク食になり、血清アルブミン値が上がります。
また、高血糖であると感染症にかかりやすくなり、感染に弱くなるのですが、(それで糖尿病の人は、膀胱炎にもなりやすいですし、怪我の化膿が酷くなりやすいです。)糖質制限食をすると、当然高血糖は起こりにくくなり、つまり感染症の予防になります。
つづく。
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