服薬ケア研究会第22回「本物の薬剤師」養成講座2〜ジャディアンスのパンフ〜

前回はこちら

「薬のパンフレット徹底読解」〜もうだまされない!統計学のワナ〜
資料:「選択的SGLT2阻害剤 ジャディアンス(糖尿病薬)」のパンフレット

この講義を受けて・・・

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理解できていたこと

◯グラフの表題や解説の中に出てくる主要評価項目(プライマリーエンドポイントとか一次エンドポイントとも言う)とか副次評価項目(セカンダリーエンドポイント、二次エンドポイント)の意味合いの違い。→副次評価項目についてのグラフはあくまで参考程度でしかない。

◯「サブグループ解析」(最近はこのようにきちんと書いてあることが増えてきたが、)その意味。→参考程度でしかない。

◯このパンフの元になった文献には「本試験において、全体集団における心血管死についてはリスクを38%有意に減少させた」と書いてあるが、それはどういうことか?これは決して「プラセボで100人死ぬところを38人救った」という意味ではないので注意!

リスクには相対リスク絶対リスクがあり、この場合の38%は、相対リスクのこと。
HR0.62(95%CI 0.49-0.77)となっているので、プラセボでの心血管死を1とするとジャディアンス服用群では0.62であった。つまり1−0.62=0.38  38%減少した  ということを意味する。
しかし、実際はイベント発症の割合で、表からプラセボ5.9%→ジャディアンス3.7%なので、5.9-3.7=2.2% 2.2% 減少したに過ぎない。100人中2人救ったということ。「相対リスク」で書いた方が、効果が大きいように見えるため、薬のパンフレットは、ほぼもれなく「相対リスク」で書いてある。
そのまま鵜呑みにするのではなく、「絶対リスクではどうなる?」とイメージして見ることが大事。メーカーのMRさんに「絶対リスクではいくらですか?」と聞いてみましょう。

わかっているようで、まだ少しモヤモヤしていること

◯p値
◯ハザード比、オッズ比
◯95%信頼区間
もうそろそろ、スラスラと理解したいです。

今回新たに出てきた用語

◯「カプランマイヤー曲線」とは、時間を経るに従って、生存率(もしくはイベントの発現率)がどのように変化したかを示すグラフ
(横軸:時間  縦軸:生存率、または発現率)
◯交互作用・・・(よくわかりませんでした。)

ジャディアンスのパンフを読解した結論

SGLT2阻害剤は、何種類もの薬がたくさんの会社から発売されていますが、どの薬もほとんどその効果に差がないと言われています。
でも、ジャディアンスのパンフ(総合版)をサラサラ〜っと見てみてください。
なんだかすごくよく効く薬って思えませんか。特にアジア人の日本人には、いいんじゃない!?って。

結論としては、詳しくは述べませんが、
信頼区間が1をまたがってないので有意差があると思ってよく見るとp値が0.4だったり、あくまでサブグループ解析や副次評価項目の結果でしかなかったりで、参考程度の結果でしかありませんでした。
「心血管死を防ぐ効果があるとされている」「特にアジア人において、心血管死を防ぐ効果が高い」となっていますが、あくまで参考情報で、統計学的には大した意味はないというパンフレットでした。たとえ確かな結果ではなくても、どれか薬を選ばなければいけない処方医にとっては、「この試験では一応こういう結果が出ています」という情報提供は、ある程度参考になるということでしょうか。エビデンスは決して高くないことを正直に載せてあることは評価できますね。ジャディアンスを飲んだ方が脳卒中が増えるというデータも載っていましたよ。ただし、参考情報でしかないことを読み取る力がないと、「すごく効きそうだ」と思ってしまうってことです。メーカーとしてはきちんと都合が悪いこと(有意差はなかったことも、統計学的には確かではないこと)も載せているのに、読み取れないのはこちらの問題です。

薬剤師としてめざすは、「医師に質問される→資料を取り寄せさっと読む→正しく読み取り、パンフに書いてない言葉で医師に説明できる」ですね。

次回につづく

この記事を書いた人

なおこ

京都市内在住の薬剤師です。
仕事の中での気づき、想うこと、服薬ケア研究会での深い学び、糖質制限食などの食に関する学びや私なりの知見を発信しています。
好奇心旺盛、学ぶことが大好きなので、その他にもいろんなテーマで誰かのお役に立てそうな情報も発信中。