12.コレステロールは動脈硬化の原因じゃなかった!
No.8でも紹介しましたが、最近の研究で、実はそもそも動脈硬化の原因がコレステロールではなかったことがわかってきました。
どういうことかというと・・・
まず動脈硬化とは
動脈の弾力性が失われて硬くなったり、動脈内にさまざまな物質が沈着して塊(プラーク)を作り、血管が狭くなったり、詰まらせたりして血液の流れが滞る状態。
心筋梗塞とは
冠動脈(心臓の筋肉細胞に酸素と栄養を与えている血管)の動脈硬化が進行して、心筋細胞への血の流れが悪くなって細胞が壊死してしまう病気。
心筋梗塞を起こした部分の血管を解剖して調べると、たくさんのコレステロールが沈着していたため、コレステロールのせいで動脈硬化が進行し心筋梗塞を起こしやすくすると信じられてきたのです。
ところが、長年の研究で心筋梗塞の本当の原因は「血管の炎症」であり、コレステロールはその炎症を修復してくれていたことが分かってきました。
(論文:Scientific American,May,29-37,2002)
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この論文によると,20年以上にわたる研究で、塊(プラーク)は血管表面ではなく、血管内部から作られてくることが分かってきました。
何らかの原因で血管が炎症を起こすと、その細胞の修復のために細胞膜の原料であるコレステロールが必要なので集まってきます。従って心筋梗塞を起こした冠動脈の動脈硬化部分にはコレステロールが多く見つかっていたのです。この新しい考え方では、血管の炎症のない人はコレステロール値が高くても心配ありません。
この血管の炎症を起こす原因は研究中ですが、タバコ、トランス脂肪酸(マーガリンなどに多く含まれます)、鉄、BMIが35kg/㎡を超える中高度肥満、高血糖、過労などの大きなストレスなどが危険因子とされています。
また、米国CBNテレビの健康番組でも同様の見解が放送されたそうです。残念ながら、現在はその映像は見れなくなっていましたが、京都の糖尿病専門医である江部康二医師が内容を要約してくださっています。コレステロールを火事場の消防士に例えて分かりやすく説明されています。ぜひ見てみてください。
またこの内容は、現在の日本のコレステロールガイドライン(日本動脈硬化学会)に真っ向から異を唱えている「日本脂質栄養学会」の見解の一つでもあります。
この見解からみると、「コレステロール値をいくら下げても、家族性高コレステロール血症の人の心筋梗塞を減らすことができない」や「スタチン剤には心疾患を減らす効果を認められない」という最近の研究報告結果も、全て納得がいきますね。
つづく〜
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